タクスコと、運命の出会い

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9月10日。
ホテルをチェック・アウトし、駅に向かう。
ここからはバカンス!
高速バスをタクスコで一度下車、数時間過ごして、
その後アカプルコのビーチに向かう予定。
メキシコは銀の産地、タクスコは特に有名とのことだ。

ここはメキシコ、ぼろぼろのバスが1時間半くらい遅れて迎えにくるに違いない、
そして道中、強盗団に襲われるかも、と思っていたら、
予定時刻の10分前に立派な大型バスが到着。
シートも今まで日本で乗ったどのバスよりも豪華。

ひとつにまとめた髪にバンダナ、放浪の旅の途中といった風情の、
髭をたくわえたタフそうな青年も乗りこんでくる。
「オーラ」
「オーラ」
良かった、彼なら強盗団と戦ってくれそうだ。

1時間半、ひたすら低木の森とサボテンが続くハイウェイをバスはひた走る。
信号のないハイウェイなのに、突然ブレーキ。
見るとバスの前を牛が数頭渡る。
ところどころに、ロバや馬の群れも。

さて、銀製品のショップが並ぶだけと思っていたタクスコは、
もう表現のしようがない。
メラニー、この町が大好き。ここに住むにはどうしたらいいのかな?」
「さあ。会議のオーガナイズの会社でもするとか?」

石の坂道を登ったり下ったり、どの路地にも趣のある白亜の建物が続いて、
歩いても歩いても見飽きない。
町のいたるところにはためく赤・緑・白の国旗が白い石壁とマッチして、
とにかく美しい町だ。

「こんなに自分の国の国旗が好きでうらやましいな。
日本では戦争以来、国旗はナショナリズムとかライト・ウイングとかの
象徴も場合もあって、誰もこんなふうに飾ったりはしたがらないの」
レストランの壁やテーブルに日の丸が飾ってあるなんてあり得ない。
「日本人は自分の国のことがあまり好きじゃないのは見てて悲しいわ」とメラニー

銀製品のお店を見学。
「ユカ、見て。20ドルよ、安いわね」
「ほんとね(20ドルだから2,000円か)」
そして値札には200ペソの表示。
0をひとつかふたつ、取ったりつけたり、簡単なはずなのに、
しょっちゅう混乱する私。

露天も並ぶ。
紐で編んだしおりを見つける。
店番は14、15歳ほどの、笑顔のかわいい少年。
「これ、いくら?」
「(なんとかかんとか)」
「英語では?」
「ええと・・・15ペソ」
「ワン・ファイブ?それとも、ファイブ・オー?」
「ワン・ファイブ」
「じゃあ、4本ください」

4本で60ペソ(600円)。
お財布を見ると、500ペソ札しかない。
「小銭がないの。大丈夫?」
「小銭ない?」
「ないの」
両替に行くらしい少年。

戻ってくると、笑顔で40ペソを返してくる。
あれ?少なくない?

少年はにこにこしている。
「ノー、ノー。500ペソ札を渡したよね?おつりが足りないわ」
自分の手にある60ペソを見せてくる。
「ぺらぺらぺら(両替してきたんだ、残りはこれだよ)」

「どうしたの?」とメラニー
「ひとつ15ペソで、4本で60ペソだったの。500ペソ渡したけど、おつりがこれなの」
私と違って頭の回転の速いメラニー
「彼女、500ペソ渡したでしょ、おつりは440ペソ。足りないわよ」
少年はにこにこしたまま、すぐに足りない分を返してきた。

「彼、おつりがわかってなかったの?」
「わかっててやってるのよ。みんな賢いの」とメラニー

少し先の露天では、カラフルに編まれたショールを見つける。
こちらの店番は10歳くらいの丸顔の男の子。
「50ペソ」
今度は私がコインを見間違えて、10ペソを渡す。
「・・・ノー。50ペソ」
「オー、ソーリー。はい、50ペソね」
先ほど受け取った10ペソコインを、少年は手にしたショールの下にすかさず隠す。
50ペソ紙幣を渡す前に、
「そのコイン返して」と私。
子供たちに負けないように、こちらも少し賢くなった。

「素早かったわね、コイン隠すの」とメラニー
生活していく術なのだろう。

後ろ髪を引かれる思いでアカプルコ行きのバスに乗り込む。
タクスコ、美しい白壁とメキシコ国旗の街、
数時間の滞在ですっかり虜になってしまった。