情念の人形浄瑠璃

文楽を観ました。

前から9列目の中央の席。
人形の表情や繊細な動きをじっくりと観られました。
(水戸の県民文化センター、近くで観られて大好きです)

演目は、「伊達娘恋緋鹿子(だてむすめこいのひがのこ)」と「生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)」。

「伊達娘恋緋鹿子」は一段(一幕)だけの上演でしたが、恋人を救うために、
火あぶりの刑覚悟で(偽りの)火事を知らせる鐘を鳴らす小姓の女性のお話。

恋人を助けたい一心のお七が、火の見やぐらのはしごを登るシーンが見せ場でした。

「生写朝顔話」は、お互いに一目惚れして心が通じた相手と離れ離れになり、
その男性を探して旅するうちに、泣き暮らして盲目となってしまった女性、深雪が主人公です。

憔悴した深雪はある宿屋に拾われて、お琴を弾く女芸人として暮らしているのですが、
そこに恋の相手の阿曽次郎が、偶然、お客として現れます。

目が見えないために阿曽次郎に気づかずにお琴を弾く深雪(芸名:朝顔)と、
深雪に気づいて、眼病に効く薬などを置いて立ち去る阿曽次郎。

阿曽次郎が立ち寄ったと知って、生きる気力を失い自害しようとする深雪ですが、
阿曽次郎が置いていった薬というのは甲子歳生まれの人の血を混ぜると万病に効くとかで、
わけあって、ある人が深雪のために切腹をし、深雪はその血と薬で目が見えるようになります。

そんな、少し奇想天外でもあるメロメロのメロドラマ(浄瑠璃語りの大太が語るので再現ドラマ風)
なのですが、大名の娘で美しかった深雪が盲目となり、髪もほつれて、弱々しく杖をつきながら
(人形が)登場すると、胸が詰まったりして。

江戸の上方の人たちも、こんなふうにお人形の世界にひととき浸って、
娯楽の時間を楽しんだのかしら、と共有する気持ちになるのも文楽の楽しさだと思います。

さて、明日から、2泊の旅で長崎に行ってきます。