能と狂言

母と、オーチャードホールに能と狂言を観に行きました。
出し物は野村万作の「業平餅」と、梅若六郎野村萬斎の「安宅」。

前回、能と狂言を観たのは去年の夏、水戸の県民文化センターでしたが、
その時には前から5列目、人間国宝茂山千作の息遣いや、
佇むだけで笑いを誘う、福をたたえた笑顔に刻まれた皺が見てとれるほど。

今回は30列目、随分舞台から遠かったです。

チケットに表示された番号とシートに付された番号を慎重に見比べながら、
私たちの隣の席に辿り着いた80代の男性。
「いやぁ、遠いなぁ・・・。残念ですね」と笑顔を向けてくる。
「少し遠いですね」
「初日に電話したんですけれどねぇ」

取り出したノートには、能の勉強をしているのか、びっしりと手書きの文字が。

ところで、萬斎と言えば、今は疎遠になった友人が筑波大附属高校のバスケ部時代、
萬斎さんの1年だったか、2年だったか、後輩だったとか。

高校時代の萬斎さんは明るく楽しい先輩で、マイケル・ジャクソンのムーン・ウォークを
熱心に練習していたと言っていました。

10年ほど前に、その友人に誘われて英国美女の弦楽アンサンブル"bond"のコンサートに
行って以来のオーチャードホールだなぁと思い出しました。

さて、能は相変わらず難しいですが、母に連れられて何度か観るうちに、
狂言の面白さはわかってきた気がします。

そして、能の舞台の終わり方も。

最後のひとりが舞台のそでにゆっくりとした摺り足でひけていくのを、
余韻に浸りながらしんとして見守る観客、そして、拍手。
歓声はなく、当然カーテンコールもなく、すべてを見届けると席を立つ観客。

日本的な静けさで、なんともcoolで大人っぽい空間ですよね。