メキシコのグラト

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離れたキャンパスの大学事務局に行く用事ができて、
ランチ・ボックスを片手にメキシコ自治大学の助教授の車に乗り込む。

午後はサイド・イベントなので、受付にいる必要がないとの
メラニーの許可がおりて、東大のIさんたちと市内観光に行くはずだった。

ところが大学事務局でおそろしく時間がかかり、Iさんたちとはぐれる。

ホテルに戻ったのは夕方4時30分。
さて、ひとりだ。
どうしようかな。
観光地のソカロに行って、宮殿も見たいし、カテドラルも見たい。
でも、人が住んでいるところも歩いてみたい。

迷ったけれど、住宅地を歩くことに。
ホテルに向かうタクシーから見かけた地区に向かう。

通りでは、壁という壁に落書きやお店の宣言。
通りからひとつ入れば、古い石の住宅が並ぶ。
路地ではいたるところで子供たちがサッカーをしている。
そこかしこで、廃車になりそうな車を修理している。
野犬なのか、やたらと大きい汚れた犬がうろうろしている。
この町は裕福ではなさそうだ。
少しどきどきしながら歩く。

道端に座りこんだ修理工の人たちが、近づく私をじっと見ている。
通りの反対に渡った方がいいかな・・・。
修理工のひとりが、
「サヨナラ」
日本語で。
「さようなら」
日本語を返す。

道端のバイクのそばにまるまった猫を見つけた。
写真を撮っていると、浅黒い顔に深い皺が刻まれた、
汚れた服を着た老人が近づいてくる。
また少しどきどきする。

「グラト」と老人。
「・・・。I'm sorry, I don't speak Spanish」
「グラト」
「・・・グラト・・・means cat?」
「Si.(そう)」
「グラト、すごくかわいいグラトですね!」

2時間の徒歩の旅、町には人々の生活があった。
楽しくて、そして、とても心に残った。