震災と外国人

先週のこと、去年2か月だけ働いたインド人研究者あてに、
インド大使館から安否確認の電話がありました。

「去年の11月にインドに帰国されました」と伝えると、
「じゃあ、今、インドにいるんですか?」と大使館。

入国したことはわかっていても、出国は把握していないものなのかしら。
ルーマニア人同僚Lにそう言うと、

ルーマニア大使館は地震の2日後に発表したの。
日本在住のルーマニア人全員の安全が確認された、って。

私のところには確認の電話もなにもこなかったけど。
ルーマニア政府はいつもそんな感じ」と笑うL。

ルーマニア政府は地震の一週間後に、在日ルーマニア人を
帰国させる飛行機を準備したそうです。

「朝の4時にルーマニア大使館から電話があったって。
今日飛行機を出すから、午前11時までに成田に来るように、って」
と、Lの友人のRさん(ルーマニア人)。

でもね、と続けて、

「私のところにはそんな電話こなかった。
ルーマニア政府は私のことはどうでもいいみたい」

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放射性物質漏れを心配していた同僚のアジア人一家が、
避難先の九州からつくばに戻りました。

「僕の家の周りの外国人は全員つくばを離れて、
誰ひとりここにいなくなったんだよ」と彼。

そして、「日本人はcalmすぎる」。

「つくばは心配ないと思う。政府が数字を出して説明しているから」と言うと、

「日本の政府は情報を隠している。
だから外国政府は日本政府を全然信頼していないんだよ」。

そして、

原子力発電大国のフランス政府がいち早く在日フランス人を
日本から引き揚げさせたから、他の国もこれはただ事ではないと、
フランスに倣ったんだ。フランスは一番良く原発を知ってるからね」と彼。

「日本人は基本的に政府を信頼している。
それに、大学教授とか専門家も、数字を出して説明しているでしょう?」と私。

彼も同じ研究者なのに、それも信用しないのかな?
すると、

「東大の教授とか、京大の教授とか、みんな政府とつながってるんだよ。
だから、政府が言っていいと言ったことしかしゃべらないんだよ」。

「日本はそんなことはありません」と言えば言うほど、
政府にだまされる盲目的で危険な国民みたいに思われそう。

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国際結婚は大変だろうな、と思います。

友人のTさんの夫はフランス人。
日本の政府は信用できない、すぐにフランスに避難したいと言う夫と
しばらく揉めていたそうですが、結局、彼女は半月仕事を休み、
一家でフランスに帰省していきました。

フランス人の友人(研究者)からは、数年振りにメールをもらいました。

「日本の政府の言うことを信用しないで。
このサイトの情報が役に立つと思うよ」

フランスの研究所の見解を載せたホームページなのか、
すべてフランス語で、読めませんでしたが。

ヨーロッパ人にはチェルノブイリの経験があるし、社会も文化も違うし、
日本人は鈍感すぎる、と感じる背景があるのでしょうね。

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さて、収拾のつかないアジア人同僚との会話でしたが、

「○○研究所の友人が言っていたけれど、あの研究所では
外国人がみんなに国に帰ってしまったことに怒っているらしいよ」と彼。

続けて、
「だから彼に言ったんだ、じゃあ日本人にこう言いなよ、

『あなたが中国に住んでいたとして、原発で爆発があったとして、
あなたは日本に帰りますか?』って」。

中国政府と日本を同じに考えるわけにはいかないと思うけれど・・・。

彼に聞いてみました。

「あなたが自分の国に住んでいて、あなたの国で同じことが起きたら、
どうする?」と。

「その時は自分の国に残るよ。ここが自分の場所だ!と思うからね」と彼。

結局は、そういうことなのでしょうね。

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外国人が避難して仕事を休んだ場合、
母国からの強い避難勧告があった場合は出勤した扱いにすると
所が方針を決めました。

証拠として、アジア人同僚の母国の大使館が在日の自国民に向けて
発表した文章を和訳して、所に提出。

そこには、「原発の爆発の影響が考えられる場所(東京を含む)に住む人は、
for a while(しばらくの間)、somewhere(どこか)に避難すること」。

だいぶアバウトな避難のすすめでした。

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ルーマニア人同僚Lのお母さん(ルーマニア在住)のところには、
知人たちからひっきりなしに連絡があるそうです。
「どうして娘をそんな危険な国に行かせたんだ」と。

地震が多いし心配するよね」と私。
「でも、日本ほど安全な国はないよ」とLとLの友人のRさん。

ルーマニアでも30年前に大きな地震があったそうです。

「今回の津波は誰にも想像できなかったから仕方ないし、地震はどこでもある。
ルーマニアで同じ地震が起きたら建物はまた全部壊れるよ。

日本みたいに耐震を考えて建物を建てているところは他にない。
世界一安全な場所」

そう言って、頷き合うふたり。

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被災地では、がれきの分別を始めたそうですね。
本当に、強い国だと思います。


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