Dr. ライナー

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写真はAIT構内に祀られていた神棚です。
カラフルでした。

さて、明日がいよいよシンポジウムという日、

「参加者のP.ライナーから変なメールがきたんだよ」とネパール人同僚A。

「私はtotally blindなので、空港でタクシー乗り場まで案内してくれるアシスタントを
手配してくれないか?って」

よっぽど旅慣れなくて、しかも偉い教授なのかな、こんなことを頼んでくるなんて、とA。

「本当に目が見えないんじゃない?」とYさんと私。
「え、本当に!?・・・彼のメール見てみてくれる?」と青ざめてメールを検索するA。

"totally blind"を「疎い」意味の比喩と思ったというボスとAでしたが、
パリから到着して受付に現れたDr.ライナーは、本当に盲目でした。

「Dr.ライナー、GCPのアシスタントの○○です。お会いできて光栄です」
名乗り出ると、「こちらこそ」と、とても華奢な手を差し出すDr.ライナー。

「書類にサインをいただけますか」と尋ねると、
「もちろん、もちろん。どのあたりですか」と紙をさぐり、とてもゆっくりと時間をかけて、
小さくサインをしてくださいました。

参加者にはプログラムとエコバッグを渡していたのですが、
「プログラムは必要ありませんか?」
「はい、いりません」
「では、こちらのバッグをお持ちください」

バッグにはGCPのパンフレットと書類入れとノートとペンが入っていたのですが、
パンフレットもノートもペンも必要がなかったことに、あとになって気が付きました。

夕方、ワークショップが終わり、
「○○です。レセプションの前に一度お部屋に戻られますか?ご案内させてください」
と手を取ると、
「もちろん。ありがとう」

「こちらは狭い廊下です」と私。
「そうでしたね。とても狭いですよね」とDr.ライナー。
「少し段差があります」
「OK。では、右手にエレベーターがありますか?」
「はい、あります」
「そうですね。ここから先はわかりますからひとりで行きます。ありがとう」

会場は本館、客室は別館と、少し複雑な造りの建物で、私など、
なかなか位置関係が掴めずにいたのに。

Dr.ライナーは、ほとんど文字だけのパワーポイントのスライドを使いプレゼンをし、
会期中、すっと背筋を伸ばして座っていました。

とても素敵な黄色いパンツと緑色のシャツを着て。