ハートランドの明るい店内に入ると、マーティンはすでにテーブルについて待っていた。
「ゆかちゃん!どうしてた?」
席を立って、ハグで迎えてくれる。
12月から1ヶ月の休暇を取って、コロラドに帰省していたマーティン。
ランチにはデジカメ持参、ホワイトアスパラのクリーム・パスタに時々手を止めながら、
アメリカで撮ったたくさんの写真を見せてくれる。
白髪の優しそうなお父さんはスペイン人、肝っ玉母さん風の明るい雰囲気のお母さんはメキシコ人、
だったか、その逆だったか。
「マーティンはお父さんと似てるね」
「そう、私はお父さんと似てる」
「(あ、そうか・・stepmotherかも)お母さんはマーティンの本当のお母さん?」
「本当のお母さん?そう、本当のお母さん」
ご両親は離婚しなかったのね、ラッキーだったね、と言うと、
「も~う、ずっと大変だった~・・・」
目をぐるっと回す。
離婚はしないもののしょっちゅう夫婦喧嘩とか、ほとんど家庭内別居とか・・・?
「両親はずーっと、ラブラブ、キスキス、ラブラブ、キスキス・・・」
やれやれ、という表情のマーティン。
両親と2人の妹、家族全員揃って正座して、何かを囲んでいる写真があった。
「なんだか日本の家庭みたい。どうして正座なの??」
「これは私が日本の夕食をした。全部日本のよう。私は日本の食事を作った」
次の写真はマーティンが作った日本食。
大きなプレートの半分におそば、半分に海老や野菜の色とりどりの天ぷらが。
「すごくおいしかった。ほんとにすごく。粉が違う、ちょっとフライみたいでした」
マーティンの母方のおばあさんは、若い頃、「超、超、超、ほんっとに!」綺麗だったそう。
「おばあさんはパリグゥだった」
「・・・?おばあさんは何だった?」
「パリグゥ」
「・・party girl?」
「そう」
そんなにゴージャスなパリグゥを60年前に射止めたのは、一体どんな男性だったのかしら。
「おじいさんはどんな人?」
「力が強い人。大きい」
なるほど。
デザートに絶品のティラミスをシェアしながら、最後の写真に辿り着く。
背の高い中年の紳士と、同年代の、こちらも元パーティー・ガール風の華やかな女性のツーショット。
「この人はおじさん」
「素敵なおじさんね。隣の人は奥さん?」
「そう。おじさんは初めての結婚。彼女は5回目の結婚」
マーティン一家の顔ぶれをマスターしながら、世界中に、それぞれの人生があるものだな、と、
なんだか少し感慨深いランチでした。